「なにを、……考えているの?」


「お前が聞き分けのいい人間なら、俺は本当のことを言わずに済んだんだけどな」


仕方ない、と呟く仁が分からない。


その冷たい視線が、あたしの息を止めそうだ。


「俺らの族の話は聞いているか?」


「なにも」


だって興味がなかったのだもの。


ここの成り立ちなんて。


過去に縛られるより、ずっと未来を見てきた方が素敵だと思うから。


だからあたしの過去という例外を除いては、出来るだけ未来への希望を信じてきた。


「…俺らの族は、俺の親の組である銀深会かの下部組織として存在している」


カブソシキ……?


分からない単語に戸惑ってしまうが、なんだか聞くことができないので、静かに先を促す。

それがなにが原因なのか。


仁の醸し出す雰囲気なのか。


あたしを射抜いて離さない真っ直ぐな目なのか。


分からないまま、先を促す。


「そこから出された司令には、忠実にしたがうことが決まりだ」


…まさか。



「…お前をここに今まで置いていたのは、父親の命令だったからってだけだ」