「退職させて下さい。お願いします。」

園長は舌打ち混じりにそれを受け取った。

「もう勝手にすれば?明日から来なくて良いから。」

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5年7カ月…長いようで短かった…。
家に帰ってからも園長とのやりとりが呆気なく終わり、未だ現実であったのか信じられずにいた。
いや、辞めたかったんだけどね!辞めたかったけど、辞められるのは嬉しいけど、引き継ぎとかあるじゃん!?明日からって…
辞める気ではいたけど、こうも簡単に切り捨てられるとは思っていなかった。きっと向こうは私の事なんて、捨て駒にしか思っていなかったんだな…
怒り、安堵、悲しみ…様々な感情が渦巻く。
「色々あったな…」
子どもが好きで、小学生の頃から保育士に憧れて、高校を卒業した後は専門の短大に通って、やっと夢の職業につけたんだっけ…
「自分の1年目…」
丸山るみは就職して1年目の頃のアルバムを取り出すと、初めての保育士としての思い出を思い返していた。