『ユウナちゃん握手会で彼氏に会えないって泣いたんだって?
ネットで話題だよー』

『……お恥ずかしいです』

『もうボロボロ泣いてましたねー。
ファンのみなさんが慰めたり励ましてくれてなんとか最後まで握手会できたって感じです』

『ちょっ……ハルト、本当のことだけど言わないでよっ!』

本当のことなんだ。と画面の中のバラエティー番組の人も観客の人も一緒に笑っている。
隆矢は笑顔で話している勇菜を画面越しに見て机に突っ伏した。

ネットで“Shineのユウナが握手会で号泣”なんていうのが出回っていて気になって見てみると、彼氏に会えなくて寂しくて泣いていたという勇菜の初恋の純粋さを語った記事だった。

「早く会いたい……」

抱き締めて安心させてあげたいと強く手を握り締めた。
クランクアップまで後二日……それまでの我慢だと自分に言い聞かせていると背後からぎゅっと誰かに乗しかかられた。

「ふふっ……だぁれだ?」

「……離れてください、草野さん」

「すごい、正解!
よく私ってわかったわね」

いい加減まともに話すのが面倒に思えてきた相手に隆矢はゆっくりと体を起こす。
先日の生放送以来、隆矢を含めて周囲の美佐に対する態度は明らかに冷たいものになっているのだけれど、美佐はそれに物怖じすることなく普段通り隆矢にまとわりついてきていた。