生放送の収録が始まり最近デビューしたばかりのアイドルや人気のあるグループが歌う中、Kaiserがずば抜けた圧倒的な歌唱力で見る者聴く者全てを圧倒し、その曲の世界観に引き摺りこんでしまうような歌とパフォーマンスを目の前で見せつけられて勇菜はアイドルの頂点への遠さを今回も思い知らされた。

「Kaiserのお二方ありがとうございましたー!」

「ありがとうございました!」

司会進行の女性と美佐が拍手で出迎えると周りの共演者達も揃って拍手で拓也と勇人を出迎える。
激しい曲だったのに全く息を乱していないところがさすがだと、勇菜は力一杯手を叩いた。

「今歌っていただいた曲はオリコン初登場一位、デビュー曲からの連続一位獲得数を更新していますが?」

「驚きの一言です。
これも支えてくれているファンがいてこそです」

「でも、実力もあると思いますよー?
Kaiserさんの曲は本当に歌で勝負って感じですけど、中にはドジなふりして注目を集めるアイドルもいますからー」

そう美佐が明るく話した途端にスタジオの空気がビシッと固まった気がするが恐らく気のせいではないだろう。
というのも、生放送が始まってから短いMCに入る度に美佐は空気も読まず遠回しに勇菜に嫌みを言っているのが誰が聞いてもバレバレだったからだった。