「何をですか」

「彼女の浮気現場」

ほんの一瞬、ざわっと周りがどよめいた気がするが隆矢は長く溜め息をつくと美佐を睨み付けた。

「ユウナがそんなことするはずないでしょう」

「でも見たもの。
証拠だってあるわ」

「他人のそら似だってこともあります。
これ以上ユウナを中傷するなら……」

「なら見てみてよ」

目の前に勢いよく突き出されたスマホには一枚の写真が表示されていた。
馬鹿馬鹿しいと思いながら一応見てみるが、そこに写し出されていた画像に目を見開いた。

「あ……これ、ユウナちゃん?」

興味本意で覗いた共演者の一人が驚いたように呟くと、周りにいた人達もこぞってスマホを覗きこんでは驚きの声をあげていた。

「こんな時間に男性と、しかもこんなに嬉しそうな顔で写ってるなんて……どんな関係かしらね?」

相手の男性の顔は見えないけれど、確かに画面の中で勇菜は満面の笑みを相手に向けていた。
どこか勝ち誇ったように笑う美佐を前に隆矢は無意識に台本を握る手に力を込めるとグシャッという音がした。