「私、ありもしないことでスキャンダルに巻き込まれるのが一番怖いことだってお母さん達に言われてたの。
でも私はスキャンダルを恐れてビクビクしながら活動するのも、隆君と付き合うのも嫌なの」

外の看板を片付けながら話す勇菜を朝陽が何も言わずにじっと見つめているのを感じ、勇菜は片付けの手を止めて真っ直ぐ向き直った。

「先手必勝。
朝陽君が熱愛宣言の時にプロデューサーとしてアドバイスしてくれたように、私スキャンダルを秘密にしないアイドルを目指そうと思ってるの」

どう思う?アイドルとして失格かな?と僅かに不安に思いながら聞くと朝陽はふっと笑って、いや……。と首を横に振った。

「新しいアイドルの形だし、元々秘密が苦手な勇菜に合ってるんじゃないか?」

「本当?よかったー!
あ、それでね、映画がクランクアップしたら隆君が朝陽君に会いたいって……」

隆矢の事を笑顔で話していたら突如少し離れた曲がり角の辺りから何かが小さく何度も光った気がした。
反射的に朝陽が勇菜の前に出て庇われたが、その時にはもう小さな光もなく何の音もしなかった。

「……今のはスマホのフラッシュだな」

「スマホ……マスコミじゃないってこと?」

「一般人の方が厄介だぞ?
すぐネットに拡散するからな」

「……スキャンダルになるかな?」

「俺と勇菜が?
笑えねーな」

そう二人で乾いた笑いを浮かべながら話していると堀原と陽人が車で迎えに来たのでとりあえず勇菜はスタジオへ、朝陽は店へと戻っていった。