「隆君次はあれ!あれに乗ろう!」

「わかったわかった、行くから焦らず行こう」

はしゃぎまわり次々乗り物に乗っては次の乗り物に走り出していく勇菜に隆矢は苦笑しているようだった。
少し子供っぽかったかなと思い直した勇菜は一つ、こほん。と咳をすると隆矢に腕を絡めて見上げた。

「はしゃぎすぎてごめんね、楽しくてつい」

「いや、いいよ。
それに子供みたいにはしゃいでる勇菜が……その……」

「え?何?」

最後の方が聞こえなかった勇菜は顔を覗きこんで首を傾げた。
対する隆矢は視線を少しだけ泳がせてから身を屈ませ、勇菜の耳元に口を寄せると小さく囁いた。

「すごく可愛い……」

「なっ……!」

突然言われた言葉と耳元で囁かれてかかった吐息に思わず耳を手で塞ぐと真っ赤になってパクパクと口を動かした。
そんな勇菜の様子に隆矢は柔らかく微笑む。
そしてそんな二人を遠巻きに、けれど温かくみんなが見守っていた。

「そ、そんなこと言っても何も出てこないからね?」

「いいよ。
照れてる勇菜の表情が見られたから」

「隆君だって照れてるじゃない……」

「照れるに決まってるよ。
女の子に“可愛い”なんて演技以外で言ったことなかったんだから」

微かに赤くなった頬を指先で軽く掻いて言う隆矢に勇菜は胸がきゅうっとなり、ああ、大好きだなぁ……。と絡めた腕にさらに力を込めた。