「それでは、貴重なお休みを長い時間有り難うございました」

晩ご飯までいただいて……。と続けると陽菜がにこりと微笑んだ。

「またいつでも来てくださいね」

「はい」

「私、下まで送って……」

「誰かに見られたら面倒だから行くな」

はーい。と少し不満気に返事をする勇菜が可愛くて、隆矢は無意識に勇菜の頭に手を伸ばすとそっと撫でた。

「帰ったら連絡するから待ってて」

「っ……うんっ!」

頬を染めた満面の笑みを向けられて隆矢は目を細めると、じゃあまた。と言って勇菜と別れた。
エレベーターに乗って壁にもたれ掛かると目を閉じて勇人の自分に向ける眼差しと以前陽人に言われた言葉を思い出す。

ーー付き合いたいなら両親の許可を貰っとけ。
無事に付き合って、尚且つ芸能界にいたいなら助言は聞いとけよ?
バレてからじゃ怖いからなーー

「……確かに何も言わずに付き合って、後からバレたら芸能界にいられなかったかも」

それほど勇菜がいないときに勇人が出していた不機嫌なオーラは半端なかったのに勇菜も陽人も陽菜も何故あんなに平然としていられたのか不思議なくらいだった。
……標的が自分だけだったからか?と緊張でクタクタになった精神で乾いた笑みを浮かべた。