「え、越名陽菜さんってあのモデルの？え？」

勇菜ったら言ってなかったの？と戸惑う隆矢を前に陽菜もおどおどしながら小声で聞いてくるので勇菜は苦笑した。

「だって、芸能界に入るなら親のコネとか七光りだとか言われないようにお父さんとお母さんのことは絶対言うなってお兄ちゃんが……」

「え、陽菜さんがお義母さんだってことはお義父さんは……」

「まだ君の父親になった覚えはないが……」

いつもよりも低い声で不機嫌さを隠しもせずにやってきた勇人に隆矢はビクッと肩を跳ねさせると恐る恐る振り返ると、目を細めて普段より感情が出ていない勇人に隆矢は顔をひきつらせた。

「お父さんは一度会ったことあるよね？俳優の一ノ瀬隆矢さん、お付き合いしたいの。
隆君、口数が少なくて表情があまり変わらないけど頼りになって格好良いお父さんです」

「せ、先日はありがとうございました、一ノ瀬隆矢です……」

「……どうも」

緊張のあまり固まってしまった隆矢とただでさえ口数が少ないのに娘が初めて連れてきた彼氏とあってさらに口数が少くなっている勇人。
ただならぬ空気が渦巻く中、勇菜がポンッと手を叩いた。