「隆君?どうし……わっ!?」

隆矢に話しかけようとしたがその言葉は最後まで続かず悲鳴のような声が出た。
それと言うのも勇人が無言で勇菜を抱き上げてお姫様抱っこをしたからだった。

「ちょっ……何!?
恥ずかしいから下ろして……っ!」

「大人しくしてろ。
風邪なんだろ?」

「勇人、まさか……」

勇人の意図に気付いたらしい拓也が何か言おうとするが、勇人の鋭い眼差しに言葉を飲み込んだ。

「顔が赤いのも動悸がするのも風邪の症状だ。
わかったな?」

「う、うん……?」

何か言い聞かせるような言い方に勇菜は躊躇いがちに頷くと、控え室に連れていく。と言って勇人が歩きだした。
その後ろ姿を三人が呆然と立ち尽くしているのをチラッとだけ見て勇菜は胸に手を当て目を瞑った。