「気になることがあったら何でも聞いてね?
私、何でも答えるから」

「うん、わかった……じゃあ聞くけど……勇菜は本当に俺と同棲しても良かった……?」

「へ?」

今度は蕎麦を食べてもないのに、隆矢の突拍子もない疑問を投げ掛けられて驚きのあまり変な声が出てしまった。
ぱちぱちと何度か瞬きをしていると、いや、その……。と隆矢が話しづらそうにしていた。

「陽人君やご両親と離れて寂しくないかなって。
すごく賑やかでいつも楽しそうだったから」

そう言って苦笑した隆矢を前に、勇菜は徐に立ち上がるとテーブルに左手をついて右手をそっと伸ばす。
ん?と首を傾げた隆矢の額の丁度真ん中、勇菜は狙いを定めると思いきり指を弾いた。

「痛っ!?」

「ふふふ……私のデコピンは中々痛くて有名なのですよ」

どや顔して見せると額に手を当てて、何をするんだ。と言いたげな隆矢に勇菜は頬を膨らませた。

「あのね、やっぱり最初は寂しいかもしれないけど、それでもやっぱり私は隆君と一緒にいたいの!隆君と一緒にいれなかった時すごく寂しかったんだから……」

「勇菜……」

「それに、実家にはいつでも行けるんだから大丈夫だよ」

隆矢に納得してもらうために笑顔でそう言うと隆矢はじっと勇菜の様子を見てから、わかった。ありがとう。と微笑んだ。

「じゃあ、改めて……これからよろしく」

「こちらこそ、よろしくお願いします」

差し出された手を握り返して握手をすれば、どちらからともなく笑いだした。
こうして穏やかに二人の同棲生活は幕を開けたのだった。