「それにしてもあの時は本当にびっくりしたよね」

「そうそう、ステージに飛び出してきたユウナちゃんファンの常連のあの人がまさか一ノ瀬君だったなんてね」

颯爽と現れてユウナちゃんを守る一ノ瀬君、格好良かったよねーっ。とキャッキャッと話している人達もいれば、あの時のハルト君ヤバかったよね。と話している人もいた。

「草野美佐目掛けて走ってきたかと思ったら、手には投げられた催涙スプレー持っててさ」

「あれ、俺達が必死に止めなかったら絶対あれで草野美佐を殴ってたよな」

目が本気だった……。と苦笑している人達もいて、それぞれあの時の話をして自分達の中にあったわだかまりを解消しているようだった。

「あ、ユウナちゃんにあの時のこととか草野さんのことは禁句だった?」

退院したときにマスコミに囲まれ質問攻めにあっていたときの映像を見たのであろう一人のファンが手を口に当てて心配そうに聞いてきた。
勇菜は小さく首を振って、大丈夫だよ。と微笑むとその人は安心したように笑った。

「お、やってるやってる」

来客を告げるベルが鳴り全員でまた入り口の方を見ると、そこには陽人と真未に後ろ手に拘束されている見知らぬ男性がいた。