「ユウナさん、退院おめでとうございます!」

「ライブ中に起きた事件ですが、被害に遭われた方々に何かコメントはありますか?」

「草野さんのことをどう思っていますか?」

勇菜が退院すると聞きつけ、病院の正面にはたくさんのマスコミが並んでカメラやマイクをこちらに向けている。
みんな必死に情報やコメントを欲しいと必死になっているようで勇菜は思わず自分の手を強く握ったが、その様子に気付いた隣に立っていた隆矢がそっと勇菜の手を取った。

「……大丈夫」

小さな声で囁かれ勇菜は頷く代わりに握られた手にほんの少し力を入れて握り返すとマスコミに向かって数秒間頭を下げた。

「楽しいライブになるはずだったのにこんなことになってしまって、とても残念な気持ちと申し訳なさでいっぱいです。
本当にごめんなさい」

そう言ってもう一度頭を下げるとカシャカシャとシャッターの音が聞こえてくる。
頭を上げて小さく息を吸い込むと、被害者の方については……。と話し出すと声を拾おうとシャッターが止んだ。

「皆さん無事に退院したと聞きましたが、このような目に合わせてしまい心苦しいです。
今回のことでライブ会場など人の多いところに出掛けるのが怖くなってしまった人もいるかもしれませんが、我が儘を言えばまた、会いに来て欲しいです。
そして、草野さんについてですが……」

話の途中で止まってしまった言葉にマスコミ全員が勇菜の言葉を待っていた。
どう話そうかと下を向いてしまいそうになったとき、隆矢が力強く手を握った。