「おはようございます。
お邪魔してすみません」

「え、隆君!?」

どうしたの!?と慌てて振り返ると隆矢に気付いた周りの人も観客も、きゃーっ!!と歓声を上げた。
順調に売れっ子俳優の道を進んでいる隆矢に誇らしい気持ちがあるのと同時に、自分だけの隆矢でなくみんなの隆矢になってしまうのではと少し寂しくも感じていた。

「収録中にごめん。
……何もないか心配になって」

「何もないよ。
隆君こそ、撮影大丈夫?手の事だって……」

「それがさ、監督が俺の役を負傷させようかとうしようか悩んでたらしくて、調度良かったって笑われた」

「それは……よかったのかな?」

よかったんじゃない?と優しく笑う隆矢に勇菜も連られるように微笑んだ。
怪我をしてからというもの、隆矢は事あるごとに勇菜に会いに来て時間が許す限り傍にいてくれているのだけれど、一緒にいられて嬉しい反面、仕事は大丈夫なのかと心配していた。

「ねえ、隆君。
心配してくれてるのは嬉しいけど無理して一緒にいてくれなくても大丈夫だよ?
お仕事も大変だろうし……」

必死にそう言い募りまだ話そうと口を開こうとした唇に隆矢の人差し指が当てられた。
数回瞬きをすると隆矢はにこっと笑って、俺がしたくてしてるから。と言った。

きゃあああっ!!と隆矢の仕種を見た観客達が興奮しすぎて涙目で叫んでいて、勇菜もその破壊力抜群な笑顔に顔を赤らめて立ち尽くしてしまった。

「多分ユウナの収録の方が先に終わるだろうから、もし仕事がなければこっちの現場においでよ。
一緒に帰ろう」

「え、えっと……うん……」

照れながらそう言う隆矢にドキドキしながら堀原に目線を寄越すと堀原は無言で頷いた。
行ってもいいという許可が出てコクコクと頷くと隆矢は目を細めて微笑んだ。