「次はハルト君ですね。
プライベートはほぼ明かされておりませんが、ユウナちゃんのように動揺してもらいましょう!」

スタッフが陽人に命綱代わりのワイヤーを付け終わると陽人がスタート位置につき、スタートの合図であるブザーが鳴ると同時に登り始めた。

結果は見事クリアでいかなる誘導尋問もギリギリであろう質問にも陽人は動揺することなく淡々と壁を登りきり、アイドルよろしく観客達に投げキッスをするほどの余裕を見せた。

「休憩入りまーす!!」

スタッフの声が聞こえ勇菜は堀原に差し出された水を受け取ると一口飲みながらそわそわしていた。

「……スタジオからは出れないぞ」

「わ、わかってますよ!」

考えていることを見透かされていたようで勇菜は誤魔化すように若干大声で言うと、近くにいた共演者が近寄ってきた。

「なになに?何の話?」

「なんでもないですよー。
ただ、同じ局で隆君……一ノ瀬君がドラマの撮影をしてるはずだから、手が大丈夫か気になって……」

「なるほど、会いに行きたいわけだ?」

「や、だからそんなことじゃなくて……!」

ニヤニヤした笑顔でからかわれて勇菜はあたふたしながら顔が赤くなるのを感じていると、あ。と共演者の人が声をもらした。