「あ、一ノ瀬さん」

「ユウナさん、おはようございます」

「おはようございます。
どうしたんですか、こんなところで」

ここはとある音楽番組を収録するスタジオ前。
その番組に出演する予定の勇菜は陽人より先にスタジオに向かったところ、隆矢の姿を見つけて駆け寄った。

「今日の音楽番組のゲストMCとして出演させてもらうんです。
よろしくお願いします」

「そうなんですね!
こちらこそ、よろしくお願いします」

爽やかな笑顔で挨拶してくれた隆矢にペコリとお辞儀をしていると後ろから、ユウナちゃん!と声が聞こえた。
よく知っている声に振り返ると、そこにはデビューしてから数十年経ってもなおトップアイドルに君臨し続けているアイドルグループ、Kaiser(カイザー)の二人が立っていた。

「拓也さん!おはようございます!」

「おはよう。
久しぶりだね、元気だった?」

「はい、すごく元気ですよー」

話しかけてきたのは古河拓也(こが たくや)と言ってKaiserのムードメーカーな人。
デビュー二年目の勇菜とトップアイドル、天と地ほどの差があるが、プライベートでは“拓也お兄ちゃん”と呼ぶほど親しい間柄だった。

そして、もう一人。
拓也の後ろでじっとこちらを見ていた男性が徐に口を開いた。