「こんにちは。
今日も来てくれたんですねー」

「ええ、まあ……」

「私、今日は失敗しなかったの見ててくれました?」

「……つまづいてましたよね?」

「何で見てるんですかー!」

いや、見に来てるんですけど。とさっきの人達と同じことを言われて勇菜はガックリと肩を落とす。

「みんな私がドジなところだけ目を背けてくれればいいんです」

「……ユウナちゃんのアクシデントはいつも予測できないから」

「予測してくださいー」

「そんな無茶な」

眉を下げ苦笑する“シキテンさん”をじっと見ていると、“シキテンさん”は顔を反らして頬を掻いた。

「俺は……ドジなユウナちゃんも好きだけど」

「シキテンさん……」

その言葉に感動して握手していた手を自分の胸の位置まで上げギュッと握り直すと、ありがとうございます。と微笑んだ。
すると、仄かに頬を染めた“シキテンさん”は眼鏡の奥の目を泳がせて徐に口を開いた。

「いや、あの……て言うか“シキテンさん”って誰?」

「あ、そこは気にしないでください」

いや、気になりますよね?と言われたが勇菜は、気にしない気にしない。と手を振った。
隣から陽人の呆れた眼差しが突き刺さるが、それも気にしないように握手に集中した。