「朝陽君!お兄ちゃん!」

バタバタと真未の店に入り、二人がくつろいでコーヒーを飲んでいたところに隆矢と駆け寄ると、陽人に眉を潜められた。

「勇菜、ここ店。
周りの人に迷惑」

「あ、ごめんなさい……」

おやつ時も過ぎて比較的人が少ない時間帯だけど全く客がいないわけでもなかったので、指摘されて勇菜は素直に小声で謝ると朝陽に椅子を勧められた。

「二人がそんなに慌ててやって来たってことは、これのことか?」

言いながら朝陽が開いていたパソコンの画面を二人の方へ向けると、そこにはさっき見ていた美佐の引退会見の映像が映し出されていた。

「うん、街中で見てビックリしちゃって……」

「まあ、かなり批判集まってたからな。
遅かれ早かれって感じだっただろ」

朝陽の言葉通り、記者達が美佐へ“スキャンダルの捏造の責任をとられる形ですか?”“否定していたあの件を認めると言うことですか?”と引退の決め手についてのコメントをもらおうと詰め寄っていた。

『……スキャンダルの捏造などしたことはありませんので認めるかどうかと聞かれてもお答えすることは出来ません』

静かな声でそう答える美佐に記者達が一斉に反論するのを会見の進行をしている人が諌める。
そんな事を何度も繰り返していた。