「認めてない」

それから暫くして、ライブが終わり出来る限りの早さで店にやって来たと言う拓也を放って勇菜の隣に座っていた隆矢を見て開口一番に勇人がそう言った。

「俺は条件付きで付き合うのは許した。
婚約は認めてない」

冷めた瞳で見下ろす勇人の視線に隆矢は一瞬たじろぐが、すぐに立ち上がると勢いよく頭を下げた。

「越名さんや陽菜さんに何も言わずに婚約の発表をしたのは謝ります。
ですがどうかお願いします、婚約を認めてください」

「隆君……」

深く頭を下げたまましっかり話す隆矢の隣に寄り添うと、勇菜は眉を下げて勇人を見た。

「お父さん、隆君は条件通りに私を守ってくれたんだよ?
それに将来のこともちゃんと考えて……」

「守れてない」

勇菜の言葉を遮って発した勇人の言葉に隆矢はピクッと反応する。
勇菜はそんな二人を戸惑いがちに見ていると拓也が、まあまあ落ち着いて。と間に入った。

「この騒動の根本的な原因は草野さんの隆矢君に対する愛情っぽいよね。
まあ、かなり歪んじゃってるみたいだけど、そうなる前に隆矢君もどうにか出来たんじゃないかなってことを勇人は言いたいんだよ」

苦笑しながら代弁する拓也の言葉に、隆矢が爪がくい込んでしまうのではないかと言うほど強く手を握り締めているのに気付いて勇菜はそっとその手を両手で包み込んだ。