「勇菜、大丈夫だった?」

「怪我はないか?何があった?」

美佐の楽屋を出て室内が見えないようにすぐに扉を閉めると、隆矢と堀原が心配そうに話しかけてきた。

「大丈夫、草野さんとお話ししてただけだから」

「話してるだけであんな音と怒鳴り声はしないだろう」

「……そうですかね」

堀原の鋭い突っ込みに勇菜は視線を反らしていると、隆矢が勇菜の手を握った。

「頼むから無理しないで何かあったらちゃんと言ってほしい。
その……俺達婚約者なんだから……」

「隆君……」

さっきの生放送の時とは違って恥ずかしそうに“婚約者”だと言う隆矢に勇菜はドキドキしつつ、あのね……。と口を開いた。

「説得しに行ったつもりだったんだけど、もしかしたら失敗しちゃったかも」

えへ。と眉を下げ肩を竦めて明るく言ってみるが、隆矢と堀原は勇菜の言葉に僅かに目を見開くと同時に深くて大きな溜め息をついた。