「だって、私は何も悪いことしてない。
ビクビクして逃げたりするなんて嫌だもん」

「酷評されてる本人がどれだけ弁明しても信頼は回復しないかもしれないぞ?」

「そしたら私の信用なんてそれまでだったってことでしょ?
大丈夫、短いかもだけどこの二年間くらいで築き上げたファンやスタッフさん達の絆は簡単に消えないと思うから」

そう言いながらスマホに視線を向けて操作すると、出てきた画面は勇菜を擁護する人達のコメント。

ーーユウナちゃんはそんなことする人じゃない!
ーー誰とでも仲良く出来るのはユウナちゃんの長所だ。
ーー一ノ瀬君とデートしてるときの顔は本当に幸せそうだった。浮気なんてありえない!

と言った内容が秒単位の早さでどんどんネットに上がっている。

「堀原さん、私ってファンの人に愛されてますねー」

「その呑気でポジティブな思考、陽菜にも少し分けてやれ」

「いえいえ、小動物みたいにおどおどしてるのがお母さんの魅力じゃないですか」

そんなことを話していると、勇菜は目的地のとあるテレビ局の前についた。

「運転ありがとうございます」

「……気を付けろよ?」

「はい!」

車を地下の駐車場へ駐める前に、あえて局の真正面の目立つ場所に車を止めてもらった勇菜は笑顔で堀原にお礼を言った。
これからどうなるのかわからないけれど、勇菜は気持ちを奮い立たせて車のドアを開けた。