『あ、すみませ………』
「大丈夫か?吉野」
放課後、自販機でパックのジュースを買って、ぶらぶら歩いていた。
曲がり角を曲がったと同時に、誰かにぶつかり、顔を上げれば和泉くん。
思わず固まってしまったのは仕方ない。
なんていうか、ほら、見守っていたかった推しと出会っちゃったみたいな。
『いや、なんもない』
「なんもないって顔じゃねーけど」
ほんとなんもないから。
和泉くんが行こうとしてる方向に、橘さんと真鍋くんがいるとか知らないし。
うん。知らない。
知らな_____
『和泉くん、ちょっと面貸してくれる?』
「なにその誘い方。俺今からボコられる?」
『いや、ぶつかった詫びにジュース奢ってもらおうかと』
「俺が奢るのかよ」
まあいいじゃん。
ほら行こう行こう。
はー、自販機が逆方向で良かった。