この王国には、二十歳になると男性は全員三年間徴兵される。

戦争に行くわけではなく、この王国と他国の境界線に立ち、侵入者や脱走者がいないかを見張るのが仕事だ。

「はあ…。疲れる……」

重い銃を背負い、ひたすら立ち続ける兵士たちは境界線ギリギリを通っていく人々から同情の目を向けられる。

ルアンとキランもそうだ。他国の旅人に「あんたら大丈夫かい?」と訊ねられ、威嚇して追い返したばかりだ。

ルアンとキランは生まれは違うが、気が合い仲良くなった。同じ場所で働けることに、お互い安心している。

「……本当は、こんなことしたくねぇよ」

悲鳴を上げながら逃げる旅人の後ろ姿を見つめながら、キランが言った。

「俺の家には、足の悪いばあちゃんがいるんだ。他国の医療技術なら治せるかもしれないのに……」

悔しそうに呟くキランに、ルアンは「そうか…」と言うだけしかできなかった。この会話を上司に聞かれたら二人ともただでは済まない。