『はい!なな先輩!』


そう言って手渡れたものを見て、私は血の気が引いた。






『ま、待ってください!私っ、もう遥とはっ、っ!!』


『うちらコントロール良すぎだよね!』


飛んでくるのは、バスケ部のみんなのバッシュ
重みのあるバッシュは痛かった。


床に落ちたバッシュをマネージャーが拾って、そのまま私を叩く。

時折脅すように壁をバッシュで叩く。



その時に響くバッシュのキュッ!という音が恐怖になっていく。



怖い。…死ぬのかな。

頭皮から体全体に痛みを感じながら頭に浮かぶのは遥だった。


憧れの遥
身近な憧れだった彼は、いつの間にか女子の憧れの的になっていた。



『っ遥…。』


『名前呼ぶなブス!』


『私は!ただ幼なじみなだけ!』



反射的に出た自分の声

静まった部室内にカチ、カチカチ…と音が鳴り出した。




『その幼なじみが邪魔なんだよ!!』


彼女が振り回す右手にはカッター

逃げることのできない私
咄嗟に顔を覆った腕が痛みだす。


『何、愛おしそうに触られてんだよ!』

その言葉の後、ザクッと音がして、髪が引っ張られる感覚がなくなった。