司が桃をおんぶして帰るのを見送ると真っ先に佳子は龍仁に質問した。
「紺野課長って引き抜きされるの?独立?なに?」
佳子の勢いに龍仁は少し驚いてから
「司はずっと独立することが夢だったんだよ。そのために、必死で勉強だってしてる。」
「そんな…。桃は知ってるのかな…。」
「どうかな。知らないんじゃないかな。」
佳子は感情的に龍仁に言う。
「そんなの詐欺じゃない!桃が知ったら…」
佳子とは対照的に冷静に龍仁は佳子の頭をぽんぽんと撫でてから話す。
「あいつだって悩んでるんだよ。あいつは35歳になった。桜木さんだってお前と同じ30歳だろ?相手の人生とか年齢とかタイミングとか。自分の夢だけじゃ突っ走れないだろ?」