「それに、少し言い辛いんだけど
………あんまり似合ってないよ?」
「え、」
「翼ちゃんはさ、顔がなんていうか凛々しいっていうか男っぽいっていうか。
だからお化粧とかしても浮いちゃってるかなって。
あっ!別にそれでもいいんなら全然してもいいと思うけどね。
ただ、私みたいにお化粧しても
…全然違うから、ね?」
「…似合ってない…、」
「でもあんまり落ち込まないで!翼ちゃんっ
似合う似合わないのがあるのは当たり前なんだから!」
それから佐藤さんがずっと何か言っていたような気がするけど、覚えてない。
無心で走ってトイレに駆け込んだ。
思いっきり蛇口をひねり水を出す。
両手で水をすくい取り、一気に顔にかけた。
何回も何回も、何回も、何回も。
…わかってたことじゃん。
男っぽい私がメイクしたって、佐藤さんのように可愛い女子にはなれないことぐらい。
初めから知ってたはずじゃん。
……似合わないって、わかってたことじゃん。
そんなの、わかってたのに。
理解していたはずなのに。
なのに、なのに
ーー…ポタリポタリと床が濡れていく。
期待しちゃって馬鹿みたい。
紘に可愛いって思ってもらえるかもって。
女の子として見てもらえるかもって。
可愛くなって、告白したら、もしかしたら…って。
そんな淡い期待ばっか抱いちゃって。
浮かれたことばかり考えちゃってさ。
本当に。私ってイタイ。

