ヒロインvs悪役

そう考えながら下を向きとぼとぼ歩いていると、急に紘がしゃがみ込んで私の顔を覗いてきた。


「っ!なに!」

「…なんか今日の翼いつもとちげーなーと思って」



えっ、
あんなに薄くしかしてないのに。

紘、気づいてくれたんだ…。



何か言ってくれるかな、なんて少し期待していた分凄く嬉しくて、口角が上がっていくのを抑えられなくて


「…変わらないから!ていうか邪魔!」



紘の顔を手で押さえて、早歩きで紘との距離を広げた。





…何してるの私!

せっかく紘が気づいてくれたのに。

ため息をつく私の頭の中で駆け巡る
『可愛くなって紘くんにアタックよ!』
『翼ちゃんを見る紘くんの目は家族の目だなって』
沙羅と佐藤さんの言葉。



何のために可愛くなろうと思ったか。



…そうだよ、紘に好きになってもらうためじゃん。
頑張るって決めたじゃん。


意を決して後ろを向く。

「…ひろ!」

と、後ろを向いた瞬間、遠くにいると思っていたはずの紘がすぐ近くにいて



「お、わ、、!」

驚いてよろけてしまった。



痛みに構えて目をつむっていても一向に痛みは襲ってこなくて、不思議に思って目を開けてみたら




「あっぶねーな。……翼、大丈夫か?」



紘がとっさに私を支えてくれていた。





ーーーーっ!


紘の腕が…!



紘の腕が私の腰に回ってる、助けてくれたのにそのことで頭がいっぱいで、言葉が出ない。