ヒロインvs悪役

確かに、メイクは凄い。

あっという間に女の子が可愛くなれちゃう魔法のよう。


でも、さ…

「私メイクとかしたことない…」



そう。私は生まれてこのかたメイクというものをした事がない。
というかメイク道具すら持っていない。


道具もなければ知識もない。ど素人。



そんな私がメイクしたってお化けみたいになる展開しか想像できない…。




「大丈夫よ。何のために私がいると思ってるの?」

私に向かってウィンクをしてそう言った沙羅。




ーーー…なぜか私は沙羅のスイッチを押してしまったようだ。








「まずは道具を揃えなくっちゃ」


という沙羅の発言から、私達はメイク道具と雑誌を買いに行き、今沙羅の家にいる。


沙羅の部屋には何回か来たことがあるけれど、本当に可愛い。

白とピンクを基調とされたこの部屋は女子の憧れなんじゃないだろうか。


私の部屋?…当然黒が多い男っぽい部屋だ。



「よし、じゃあまずはベースからね」



ノリノリの沙羅は、どんどん私にメイクの仕方を教えてくれた。



「翼の肌の色だと…これくらいなら顔も浮かないしいい感じね」

私も必死に沙羅の言ってることを理解しようとしたけれど、結局沙羅がなにを言っているのか、なにをやっているのか理解することは出来なかった。



「はい完成!ほら翼、鏡見てみな」


そう言われ、鏡を覗き込むとそこには

「おおっ、、!」

別人、とまではいかないけれど確かに女の子っぽくなっている自分がいた。





「凄い…、凄いね!沙羅!」


きっと沙羅の腕があってのこれなんだろうけど、メイクって凄い。





「最初は難しいって思うかもしれないけど、私が教えるし、慣れればアレンジできるし楽しくなるから頑張れ!それで紘君ビックリさせちゃいな」





私の背中をバシンっと叩き、ニヤリと笑う沙羅は最高にかっこよかった。