寂しがり屋の月兎

望は落ち着かない。

ずっとどきどきしている。

人混みでよかった、とすら思う。いつもなら、人に酔いそうでいやなのだが。

周りが騒がしいと、速い心音も騒がしさに誤魔化せるから。

兎田の手は優しい。

優しいのに、望がその手から逃げ出せないくらいの力で握っている。

全神経が右手に、兎田の手と触れている皮膚に集中している。

汗ばんでいるような気がして不安になる。

ところで、兎田はどこに向かっているのだろう……。