寂しがり屋の月兎

「うん。でも、最終的に合流すればいいよね」

「ん?」

兎田の微笑みは崩れない。崩れないのだが。

目の奥に、なにか悪い光が宿ったような。

「もともと、俺と望ちゃんとのデートだったんだし、二人だけの時間があってもいいよね」

「いや、え?」

「ということで」

どういうことで?

兎田は望の手を握ったままだ。

反対の手で有明たちに手を振っている。

優越感のある笑い顔に見えたのは、望の気のせいだろうか。

そして手を繋いだまま横断歩道に背を向ける。

少々足早なのは、信号が変わってから有明たちに追いつかれないためだと望は気づかない。

強引なのに兎田の手は優しくて、望はろくに反抗もできず、繋いだ手に意識を集中させて歩いた。