寂しがり屋の月兎

三日月の声のトーンは、言っても言うことを聞かない小学生に対するものである。

「いや、あれじゃないですか」

と望が指さしたのは映画館内のグッズ売り場で、傍から見ると中睦まじく、内情を知っている人間から見ると喧々諤々として、二人は並んでいた。

有明の視線は鬼をも殺すほどなのだが、なにせ兎田が微笑みを絶やさないので、言い合っていてもどこか緩さが残る。

プラス甘いマスクで、『喧嘩するほど仲がいい』美人カップルの完成だ。

二人がいる空間に、黄金の粒が舞っているような錯覚を覚える。

巨匠が手がけた一枚絵のように、それは美麗な光景だった。