「うん。あのね」

周りの人間など知ったことか、というより目にも入っていないような態度の兎田は、微笑みをまったく崩さない。

「お昼ごはん一緒に食べようよ」

「は……はいっ?」

動揺したのは望だけではない。

立ち話を盗み聞きしているクラスメイトと、ちらちら視線をやりつつ歩きゆく生徒が、ざわっと揺れた。

「誰か約束している人がいる?」

「いや、いないけど……」

「俺と食べるのはいや?」

「いやでは、ないけれども……」

「じゃあ一緒に食べよう」

それとこれとは!

望の心が叫んだ。