寂しがり屋の月兎

パニックのあまり半泣きになりかけた望が次に聞いたのは、覚えのない男の声だった。

「えっ……朔が女子に迫ってる!」

大声のした方を見ると、ワイシャツ姿の男子が二人を指さして目を見開いていた。

「三日月。なにしてるの?」

「こっちの台詞だっての」

どうやら兎田の知り合いらしい。

「女に迫られるシーンは多々あれど、お前から迫ることがあるなんて……!」

わなわなと唇を震わせる彼からは、好奇だとか興味だとかの感情は見えず、ありえないものを見たという驚愕が前面に押し出されている。

「迫るっていうのとはちょっと違うんだけどね。うーん、なんというか、流れ?」