寂しがり屋の月兎

じりじりと望はベンチの端による。

だが兎田はためらいなく二人の間の距離を詰める。

「あの、近くないですか……?」

「敬語」

「……あの、近くない……?」

「近くない」

近いって!

望の口から叫びが飛び出しそうになる。

それともなにか、上層階級の人間には、このくらいの距離は近いうちには入らないのか!

望はベンチから転げ落ちる手前まで追い込まれている。

追い込んでいる兎田は、ベンチに両手をついて上半身を乗り出し、望と視線を合わせようとする。

頬に当てていた右手を動かし、瞳を覆い隠そうとしたところで、兎田が伸ばした左手に捕らえられた。

「…………!」

もはや脳内でも言葉にならない。