「どうかした?」

ぼんやりしていた望に兎田が首を傾げた。

「なんでもないよ」

見とれていただけだよ、とは、まだ恥ずかしくて言えない。

淡い月明かりに照らされて微笑みを交わす二人を見守っていたのは、遥かの空の兎だけだった。