寂しがり屋の月兎

待ち合わせの時間までまだあるなあ、と思いつつ教室を出ると、女子が佇んでいた。

この高校の制服を着ている。

通り過ぎようとしたのだが、彼女が微笑んで望と目を合わせた。

あれ、と思う。

見覚えがある。誰だったろうか?

胸くらいまである髪が丁寧に巻かれている。

「玉川さん」

その声で思い出した。

体育大会の日の朝、話しかけてきた人だ。

望はなぜか居心地が悪くなる。

そういえば、名前も知らないこの人は、どうして望の名を知っているのだろう?