寂しがり屋の月兎

自分の出場競技を可もなく不可もなくやりすごし、そうして体育大会は終わりに近づいていく。

一度校舎に引っ込んだ望は、誰もいないはずの空き教室で目を射る彼を見つけた。

「兎田くん……?」

歓声は遠い。

兎田は望の声に気づいて顔を向ける。

「望ちゃん」

嬉しそうに顔を綻ばせて、ちょいちょいと手招きしている。

兎田は窓際の席に座っている。

開け放された窓からぬるい風が入ってきて、二人を撫でていく。