寂しがり屋の月兎

眩しい。

団席で望は目を細める。

眩しくてとても直視できない。

じりじりと肌を焦がす太陽、光をまともに浴びるグラウンド、競技中の生徒の白い体操服。

その中でも一際兎田が眩しい。

すらりとした立ち姿、そこだけ浮き上がっているかのようだ。

人の群れの中でも目立つ蜂蜜色に揺れる髪。

あげく兎田はかなり運動神経がいいみたいだ。

さらりと一等を勝ち取って、同時に女子の黄色い悲鳴が上がる。

兎田と同じ競技に出ている女子たちは彼に見とれていて、あんまり成績を残していない。

やっぱり、すごい破壊力だなあ、と望は直視しないようにしつつ、つとめて他人事のように思うのだった。