寂しがり屋の月兎

兎田は望を見つめていた。

彼女は口を半開きにして、惚けたように上をじっと見ている。

瞬き以外には微動だにせず、散りゆく花火の全てを目に焼きつけようとしているかのようである。

赤、青、黄、緑、紫──夜空を彩る花火は同時に、望の顔を照らしている。

手を強く握ってみると、いつもなら顔を赤くするだろうに、思いがけず握り返されて驚いた。

望が喜んでくれたなら嬉しい。そう、望は花火に見とれている。

兎田を忘れるくらいに。

それを不満に思う自分に気づいてまた驚いた。