潤みかけた瞳の少女と目があって、少年はすぐに状況を理解した。

一度ゆっくりと瞬きをして、それからにっこりと笑った。

『おはよう』

『おは……よ、う……?』

挨拶されて、彼女は困惑しながらも挨拶を返す。

クラスメイトたちが、気にしていないような素振りで、しっかりと聞き耳を立てているのが分かった。

『その花瓶、どうしたの?』

『え……あ、これは……』

ぎくり、と少女は身を竦ませた。

なんて言えばいい?

なんて言っても、やっぱり私は惨めだ。

『マーガレット、綺麗だね。せっかくだし、教卓に持っていってもいい?』

『へっ……あ、いや……これは……』

予想だにしていなかった彼の言葉で、少女は混乱する。

『いいよね?』

彼は笑いながら許可を求めた。

彼女はなにも言えなくなって、無言で頷く。

彼は笑みを深くして、透明な花瓶を手に取って────。