寂しがり屋の月兎

カラン、と扉を鳴らして店内に入る。

「わあ……!」

一面の本棚を見て、望は控えめに歓声をあげた。

望は漫画が好きである。もちろん、それは確固たる事実なのだが、同様に小説も好きである。

古びた紙の匂いが心を安らげる。

兎田は、望がこういうのが好きなことを感じ取って、連れてきてくれたのだろうか。

伺うように兎田を見上げる。

兎田は光のベールをまとった微笑で望を見ていた。

「兎田くん、ここ……」

「望ちゃん、好きかと思って。普通の書店ならいつでも行けるし」