寂しがり屋の月兎

何分歩いただろうか、幾度か道を曲がる度に人通りは減っていった。

今歩いている細い道には、兎田と望の二人しかいない。

先行きの知れない不安を感じはじめたとき、兎田が一軒の店を指さした。

「着いたよ」

甘く笑う彼の指が指し示している店は、こじんまりとしている。

中央に古びた扉があり、店の表の全面はガラス張りである。

ガラスの向こうの店内には、びっしりと、狭い間隔で本棚が並んでおり、本棚にも数え切れぬほどの本が行儀よく居座っている。

レトロな扉の上には、申し訳程度の看板が掲げられていた。

『足立古書堂』と。