普通 ⑴

AM 9:00




学校の目の前に立つ 。


世間一般的にはこれを遅刻と言うらしいが 、僕にとってはこれが定刻 。




扉を開けて 、黄色の上履きに履き替える 。痛くない 。




職員室で遅刻カードを貰う 。僕より背の高い誰かが何か言っていたが 、僕の耳には入らなかった 。




教室へ向かう 。白い扉に手をかけて 、横に引く 。




刺さるような視線と 、魚屋の汚い雑巾の様な匂いが鼻を劈く 。


クラスメイトの間抜けな笑い声 、扇風機の回る音 、水が垂れて床を濡らす音 。




震える脚を必死に動かして 、席に着く 。痛い 。




折角学校に来たのだけれど 、体調が悪くなった 。

頭が痛い 、腹も痛い 。我慢したが 、吐き気がしてきたので立ち上がる 。




ゆっくりと教卓へ脚を進める 。


僕より 、いやここにいる誰よりも背の高い彼に

「保健室の紙をください」



と 、いつも通りの台詞を述べる 。


彼は 、僕の額に触れた 。


「熱があるのか」

と 。