彼と出会ったのは
あたしが19歳の時だった。

16歳で高校を中退して、
色々な仕事を転々とし
友達であるりりかが、
高校卒業して東京に行くと聞き
あたしも一緒に行くことにした。

将来どうしようとか
やりたい事とか
特になかったあたしは

地元から離れる事に何ひとつ未練などなく
友達が居るからという理由だけで、
出てきてしまったのだ。

意外にも
仕事はすぐに見つかった。

小さいショットバーで
社員として雇って貰えたのだ。

オープニングスタッフを募集してるお店で探していたら
偶然見つけた。

面接をしてその場で採用が決まった。

給料も勤務形態も
申し分ない好条件だった。

りりかと一緒に住むことになったアパートは
千川という駅で、
そこから1駅の要町という駅が
職場の最寄り駅だった。

住宅街にある
隠れ家的なお店。

外から見たら
ショットバーがあるとは思えない外観だった。
重たそうな木の扉からは
中の様子が一切見えない。

辛うじて看板はあるものの
ライトアップなどはされておらず、
営業してるかどうかは、
扉にかかった
OPENとCLOSEの札で判断するしかない。

店内は
思いのほか明るく、
カウンターしかない。

綺麗というか、ほとんど物が置かれてないカウンターには
等間隔でキャンドルが置かれている。

シンプルで静かなお店だった。

そこで出会ったのが
あきちゃん…
あきらさんだった。