(奏side)

そして、《彼女》はこう言った。

紅葉「覚えて…ないの…??」

…僕にはどうすることも出来なかった。目の前にいる少女が、誰なのかも分からず、ただ、少女を見つめていただけだった。

そして、少し経ったあと、僕は言った。

奏──ごめんなさい、少しも思い出せません。──と。

その言葉を聞いた瞬間、少女はどこかへ走っていった。

僕は何故か、自分の胸が痛み付けられるような感覚に陥っていた。