優は藍の耳から唇を離すと、藍に顔を近づけた。

「青山君はせっかく素の顔がいいんだから、その気になったら彼女なんてたーっくさん出来ちゃうよ。1人の女の子しか知らないなんて、勿体なくない?」


その時、図書室の扉の方からガタッと音がする。

二人が振り向くと、扉の向こうに図書室を利用しようとした二人の女子がいた。

偶然いた居合わせた二人は顔を見合わせると、見てはいけないものを見てしまった顔をして、走り去る。

「見られちゃったね」

ピンクのグロスの唇をニッコリ引き上げて、イタズラそうに優が笑った。

「話終わった?」

「あーあ。もうちょっとお話ししたかったな」

「先輩」

「味見してみる気になった?」

「おりて」

「はーい」

優は藍の首に絡めていた腕を解くと、藍の膝からおりた。

「またお話ししたいなー」

「これで最後で」

「冷たーい」

カバンを掴むと藍は図書室を出た。

後ろから優の「まったねー」という声が追いかけてきた。

さっき入り口にいたのは俺のクラスの女子だな…

藍はそんなことを考えていた。