「人によるんじゃねーの」


「藍は?」


「おまえは本当にめんどくせー質問するな」


藍が目を開いて未来の方に身体を向けた。


切れ長の目が暗闇で少し光る。


「大事なことじゃん」


「俺にきいてどうすんだよ」


「データ」


「知るかよ」


藍は再び目を閉じてため息をついた。


「藍は?」


「なにが」


「好きじゃない人ともできる?」


「しつけーな」


「教えてよ」


「おまえさあ」


「うん」


「前も言ったよな?俺男だよ」


「だから知ってるって」


「思ってないだろ」


「思ってるよ」


未来の身体がグイッと藍の方に引き寄せられた。
藍の腕の力がいつのまにか強くなっていたことに、未来は初めて気が付いた。


向かい合った未来の身体を藍が抱きしめる。


「じゃあおまえ何されても文句言わねーの?」


藍の匂いがする。


「そんなの時と場合による」


「今は」


「言わない」


「なんでそうなるんだよ」


「好きだもん」


藍の言葉が止まった。