駅のロータリーに着くと、すぐに車のクラクションが鳴った。


シルバーのワンボックスから純が手を振る。


茶色がかった髪は今日もしっかりとセットされ、ピンクのシャツに淡い紫のジャケットを合わせていた。


「来てくれないかと思った」


未来が助手席に座ると、一昨日と同じ香水の香りがした。


「俺はタバコ吸わないから、今日は臭い気にならないでしょ。今日はお酒も飲まないから安心して」


そう言うと純はアクセルを踏む。


「ワンピースかわいいね」


今日の未来は淡いピンクのシースルーのロングワンピースにベージュの皮のショートブーツを合わせていた。


「ママの…」


ママのお客さんが買ってくれた…という言葉を飲み込んで、「ママが買ってくれた」と未来は言い直した。


「お母さんと仲良いんだね」


「服共有とかするよ」


「ほんとー!?」


「姉妹に間違えられる」


実際未来の母の有里華は32歳。水商売の仕事柄身なりも綺麗なので姉妹に間違えられることもざらだった。


「お父さんはやり手だな」


「知らない。パパいないし」


「あ、そうなんだ。変なこと聞いちゃってごめんね」


「全然。見たことないし知らないし」


未来の母の有里華には両親がいない。16歳で未来を妊娠して、最初は旦那の家にいたらしい。


「もおさ、そのババアがまじクソババアでさぁ」


と、酔った勢いでよく有里華は未来に愚痴った。


「毎日クッソ嫌味しかいわねーの。未来のことも自分のものだと思っててさ、離婚届叩きつけて家出してきてやったわ」


有里華は未来が3歳の時に離婚、連絡先を告げずに故郷の田舎を離れて上京したという。