オートロックを解除して自宅マンションに帰ると、21時をすぎていた。

未来(みくる)はシャワーを浴びてスウェットとデニムのショートパンツに着替える。

髪は半乾きのままシュシュで留めた。

てる子ばーちゃんのおかずが入っていたタッパーを紙袋に入れると、藍にLINEを送る。

『今から行く』

返事はすぐに返ってきた。

『親父が会いたがってるぞ』

未来はクロックスを履くと、歩いて1分の藍の家に向かった。

「こんばんは!」

住居用の玄関から藍の家に入ると、いつものようにてる子ばーちゃんとかずオッちゃんがダイニングにいた。

「あらまぁミクちゃん。よくきたね」

「ミク!久しぶりじゃないか。元気だったか?高校は忙しいか?」

「ばーちゃん、座っててよ」

「いいからミクちゃん座って。今お茶淹れるから」

「先におばさんにお線香してくる」

ダイニングから廊下を挟んだ和室に行くと、未来は仏壇に手を合わせた。

おばさんは身体が弱くて、藍が2歳の時に他界したと聞いた。藍は生まれるまで女の子だと思われていたらしく、そのまま女の子のためにつけていた名前を名付けたそうだ。

「ばーちゃん、藍いる?」

やかんでお湯を沸かすばーちゃんに聞くと「二階にいるよ」と返ってきた。