「ガキ扱いすんなよ」


不機嫌そうに藍が車を降りると「ガキだろう」と和夫。


「荷物運ぶぞ」


この1ヶ月、藍に何度も確認された。

二人の部屋を借りることは、和夫もばーちゃんも了承していると。


でも未来の気持ちはずっと変わらない。


「やっと帰ってきたー!」


助手席を降りると未来は両手を広げて伸びをした。


「ばーちゃんただいま!」


玄関を勢いよくあけて叫ぶと、豚のチャーシューの匂いがした。


キッチンから聞こえたのはいつものばーちゃんの声。


「先に手を洗ってらっしゃい」


「もうすぐ寿司も届くぞ!」


車のトランクを開けながら和夫も叫んだ。

大袈裟なんだから。そう呟いた未来の口元は、こそばゆい嬉しさで笑みを隠すことができなかった。


「藍ご飯にしよ」


未来が藍の手を取ると、


「荷物運べよ」と藍が呆れた顔をした。


「じゃあ藍とオッちゃんで荷物運んどいて!私ばーちゃん手伝う」


未来がスニーカーを脱いで玄関を上がると、


「お前の荷物だろ」


と、藍の声が追いかけてきた。


「おい」


もう一度背中から聞こえた藍の声に、未来が玄関の方を振り向く。